顧客対応、コミュニケーションツールとして欠かせない”ビジネスフォン”。携帯やスマホが普及した現代でも、なおビジネスフォンを導入しているオフィスがほとんどなほどです。オフィスを開設するときにはまず検討しておきたい設備と言えます。
しかし、”ビジネスフォン”と一括りにしていますが、実はいくつかの種類が。種類によって仕組みはもちろん、特徴や向いているオフィス環境に違いがあります。環境に合わないビジネスフォンを導入しても、本来の機能は果たせません。
そこで、今回はビジネスフォンの種類ごとの仕組みと特徴、向いているオフィス環境についてご紹介しましょう。ビジネスフォンを選ぶポイントや業者探しのコツについても触れていますので、ビジネスフォン選びの参考にしてみてください。
”ビジネスフォン=オフィスに必須”というイメージがあると思いますが、なぜ選ばれるのかというのはあまり知られていません。理由も分からないままただ導入するのは不安なもの。そこで、まずはビジネスフォンが選ばれる理由をご紹介しましょう。
ビジネスフォンが選ばれる理由としては、”会社の窓口に欠かせないため”が挙げられます。
外回りでの営業を主体にしていても、顧客から電話がくることはあります。最近はどこも自社サイトを設置し、サイト上に自社情報を公開しているものです。顧客がサイトに訪問し、公開されている電話番号に直接電話してくることも。
もしビジネスフォンが、電話番号がなかったとしたらせっかくの営業機会を失ってしまいます。最近のトレンドは”デジタルとアナログの組み合わせ”。サイトのようなデジタルと、電話のようなアナログで上手に窓口を作ることがポイントなのです。
ビジネスフォンが選ばれる理由としては、”複数の電話回線が必要なため”ということも。
どんな業種にも当てはまりますが、顧客は1人ではありません。企業相手の限られた顧客だとしても何十人、何百人規模に。一般相手の顧客だとしたら何千人、ときには何万人規模で対応の求められる業種というのもよくあります。
家庭用電話機のように1,2回線しかなかったとしたら、1度に3人以上から着信があれば回線がパンクします。その点、ビジネスフォンであれば複数回線の収容が可能に。1度に複数人の顧客と対応するためにビジネスフォンは必要です。
ビジネスフォンが選ばれる理由としては、”業務効率を高められるため”というのもあります。
事業の規模が大きくなるほど、社員ごとに求められる役割が細分化されます。例えば、営業職や技術職、事務職や経営職など。当然、役割によって知りえる情報にも差があり、対応するべき相手(顧客)にも違いがでるものです。
ビジネスフォンは”多機能電話機”と呼ばれるほどで外線や内線、保留や転送などの様々な機能が搭載されています。顧客からの電話を技術職の社員が取ったとしても、保留や転送を利用すれば営業職の社員に引き継げる訳です。
ビジネスフォンと一括りにしていますが、実は大きく分けて”レガシータイプ・IP-BPXタイプ・クラウドタイプ”のタイプが。タイプのよって仕組みや魅力などにも違いが。まずは、レガシータイプの仕組みと魅力、向いているオフィスを見ていきましょう。
レガシータイプというのは、”ビジネスフォン”というイメージそのもののことです。
電話回線を使用し、主装置を中心に内線電話機で限られた回線を共有する仕組みのあるタイプのこと。例えば、電話回線が3回線分、内線電話機が5機分あったとしても、主装置が着信のたびに空いている電話機に割り振ります。
設定にもよりますが、基本的にどの内線電話機からでも着信を取ることが。保留や転送を利用することで、席を立つことなく担当の社員に引き継ぐことができます。設備のほぼすべてをオフィス内に設置するのはレガシータイプならではです。
レガシータイプのビジネスフォンの魅力としては、以下の3つが挙げられます。
レガシータイプはもっとも普及しているビジネスフォンです。その為、様々な通信事業者が設備を、サービスを提供しています。選択肢の幅が広いということはそれだけオフィスに合った設備を、サービスを選びやすいということです。
また、オプションが豊富なのもレガシータイプならでは。最近だと”他設備との連携”を意識したものが多くあります。人感センサーや警報機、監視カメラなど”セキュリティ設備”と連携できる機種があるのもレガシータイプの魅力です。
レガシータイプのビジネスフォンに向いているのは以下のようなオフィスです。
正直、レガシータイプのビジネスフォンはどのようなオフィスにも向いていると言えます。というのも、先述したようにレガシータイプは選択肢の幅が広いため。小規模から大規模にかけて、特殊な業種にも合わせられる設備があるためです。
ただし、後でより詳しく説明しますが、レガシータイプでは主装置など設備を導入することに。これら設備は適切に管理、運用する必要があります。オフィスの規模に、環境に合わないものを選んでも簡単に変えられないので要注意です。
レガシータイプの仕組みは主装置を設置し、内線電話を収容するというものでした。そんなレガシータイプに変わって、主流になりつつあるのが”IP-PBXタイプ”。次に、IP-PBXタイプの仕組みと魅力、向いているオフィスをご紹介しましょう。
”IP-PBXタイプ”とはIP電話の仕組みをビジネスフォンに組み込んだタイプのこと。
IP電話とは”インターネットプロトコル(IP)”を利用した電話の仕組みのことです。レガシータイプとは異なり、”インターネット回線”を利用した通信システムを指します。つまり、インターネット回線さえあれば導入できるビジネスフォンなのです。
IP-PBXタイプには大きく分けて”インターネット回線だけを利用したもの”と、”インターネット上にシステムの一部を移行したもの”の2種類が。ネットワーク環境を使うことで、離れた拠点間でのサービス利用に強みのあるのが特徴です。
IP-PBXタイプのビジネスフォンの魅力としては、以下の3つがあります。
先述した通り、IP-PBXタイプではサービスの一部をインターネット上に移設したものが。その為、インターネットにさえつながる環境であれば、スマホのような携帯端末をビジネスフォンの内線電話のように利用できるのが魅力の1つです。
オフィスにおいてもっとも電話を、顧客とコミュニケーションを取るのは営業職です。しかし、営業職というのは外回りが多いもので、あまりビジネスフォンを利用しません。その点、IP-PBXタイプであれば外出先でもスマホから利用でき便利です。
IP-PBXタイプのビジネスフォンに向いているのは以下のようなオフィスです。
IP-PBXタイプはレガシータイプの発展形として、基本的にどのようなオフィスにも合わせることができます。特に、”大規模オフィス”や”コールセンター”のように、何百や何千規模で通信網を構築したい状況に向いていると言えます。
というのも、IP-PBXタイプはインターネット回線さえあれば気軽に導入できる仕組みなため。レガシータイプと比べて、増設や移設のハードルが低いためです。今後、ビジネスフォンとしてIP-PBXタイプが主流になるのは確かでしょう。
IP-PBXタイプの仕組みは、IP電話とビジネスフォンを組み合わせたものとのことでした。最近、少しずつ注目を集めているのが”クラウドタイプ”です。最後に、クラウドタイプの仕組みと魅力、向いているオフィスをご紹介しましょう。
”クラウドタイプ”とはクラウド(インターネット上)にシステムの大半を移行したタイプのこと。
IP-PBXがシステムの一部だったのに対して、クラウドタイプでは仕組みの大半がクラウド上に。小規模な”変換装置(主装置)”を設置するだけだったり、インターネット回線さえあれば工事不要で利用できるサービスもあるほどです。
クラウドタイプはどちらかというと”携帯端末をビジネスフォンに”するためのもの。アプリのようにスマホにダウンロードし、インターネットさえあれば利用可能に。ビジネスフォンを導入するハードル、管理する手間のもっとも低いのがクラウドタイプです。
クラウドタイプのビジネスフォンの魅力としては、以下の3つがあります。
クラウドタイプの1番の魅力は”設備投資の必要がほぼない”ということ。レガシータイプやIP-PBXではオフィス内に主装置を、内線電話機を設置する必要が。反面、クラウドタイプだとインターネット回線さえあれば問題なく利用できます。
例えば、社員にスマホ(法人携帯)を配布し、アプリをダウンロードしておくだけです。オフィス内ではWi-Fi設備で、外回り中はスマホの通信回線でと使い分けることも。社員のスマホを利用すれば、さらに費用を抑えられるでしょう。
クラウドタイプのビジネスフォンに向いているのは以下のようなオフィスです。
設備投資がほぼない反面、クラウドタイプはまだ海外製のサービスがほとんどです。国内業者であっても、海外製のサービスをそのまま提供しているところも。万が一、トラブルにあっても海外製だと対応に時間のかかる可能性があります。
もし、クラウドタイプを導入するなら、あくまで個人事業主や小規模オフィスのように小規模から。いきなり大規模に導入すると万が一の不安が残ります。国産のサービスが充実するまで、国内で普及するまでは待っておくべきです。
クラウド上に仕組みのほぼすべてを移行したクラウドタイプもありますが、今はまだ”レガシータイプ”や”IP-PBX”が魅力的です。ただ、そんなレガシータイプやIP-PBXにも、設備を導入する前に知っておきたい注意点がいくつかあります。
ビジネスフォン(レガシータイプやIP-PBX)では主装置などの設備を管理する必要が。
ビジネスフォンは精密機器の塊です。主装置はもちろん、内線電話機(多機能電話機)も定期的に点検し、状態に応じて整備する必要が。長期的に運用していると不通になったり、音声が乱れたりなど故障するリスクもあります。
大規模オフィスであれば専門の社員を配置できますが、中小規模ではまず難しいです。その為、外部の専門業者に管理を委託することに。ビジネスフォンの規模にもよりますが、毎月の管理費がかかることは知っておくべきでしょう。
先述した通り、ビジネスフォンでは主装置などの設備を設置する必要があります。
主装置を1台、内線電話機を数台と設置するだけでも1日がかりの工事です。中規模や大規模オフィスになれば数十台、数百台の内線電話機を設置することも。当然、ビジネスフォンの規模が大きければ、工事も大掛かりになります。
特に、レガシータイプでは電話配線を主装置に、各内線電話機まで敷設する必要が。台数が多くなるほど配線の本数は増えて複雑なものに。将来、オフィス内のレイアウトを変更しようにも、配線が邪魔で難しい可能性もある訳です。
ビジネスフォンを導入する上で、もっとも注意したいのは”拡張性”があるのかということ。
というのも、ビジネスフォンは導入して終わりではなく、オフィス環境に合わせて変化していくものなため。事業の規模が大きくなれば、社員数が増えれば内線電話機を増設する必要もあるでしょう。ときには削減する必要のあることも。
レガシータイプは電話配線、IP-PBXはLANケーブルと増設するには配線を敷設することに。さらに主装置自体にも容量があり、空きがないと増設はできません。将来的に、増設することを考慮した仕組みかというのが重要なのです。
先述した通り、ビジネスフォンというのは選択肢の幅が広く、オフィスによってぴったりなサービスが異なります。つまり、いかにオフィスに合ったサービスを選ぶかが大切ということ。では、ビジネスフォンを選ぶ3つのポイントをご説明しましょう。
まず、電話回線の”回線数を何本にするのか”を考えてみましょう。
ビジネスフォンはどのサービスでも対応している外線(電話回線)、内線の回線数に限界があります。小規模なものだと外線は2本まで、内線は5本までなど。大規模になると外線だけで数百、数千規模で対応しているものも。
ちなみに、”社員数の3分の1”を基準に回線数を決めるのが一般的です。例えば、社員数が10人なら回線数は3本に。使われない回線があるともったいないですし、足りないのも困ります。だからこそ、3分の1がちょうどいいのです。
次に、ビジネスフォンに”どこまでの機能を求めるのか”もポイントです。
ビジネスフォンと一括りにしていますが、レガシータイプだけでも様々なサービスが提供されています。当然、サービスによって、設備によって対応している機能には違いが。最近のトレンドは”携帯端末との連携”や”セキュリティ対策”です。
外線に内線、保留や転送など基本機能だけでいいのならどのサービスにも搭載されています。しかし、「こんな風に活用したい」とイメージがあるなら目的を明確にするべき。あとは業者と相談しながら、サービスを選ぶのがいいでしょう。
最後に、工事や設定を”依頼する業者をどこにするか”も重要と言えます。
特に、レガシータイプやIP-PBXというのは導入するのに工事、設定が必要です。また、安定して運用するには専門業者に管理を委託することも。将来的に増設するのなら、増設することを考慮したサービスや仕組みも欠かせません
業者によってはただ提供したいビジネスフォンを、サービスを紹介しているだけのところも。反対に、オフィスに合わせたビジネスフォンを、サービスを親身になって探してくれるところもあります。業者によって使いやすさが大きく変わる訳です。
先述した通り、ビジネスフォンは業者をどこにするのか、つまり”信頼できる業者”に依頼するかが大きなポイントです。業者によって失敗してしまうことも。そこで、ビジネスフォンを任せられる、”信頼できる業者”探しのコツをご紹介します。
信頼できる業者探しで1番大切なのは”相見積もり”を取ること。
相見積もりとは複数社に対して、条件を揃えて見積もりを請求すること。条件が揃っていると、料金プランはもちろんサービス内容まで比較できます。単純に料金の安いところも、サービス内容までしっかりしているところも選べるのです。
ちなみに、相見積もりを取るのなら、最低でも”3社以上”からがおすすめです。2社だと比較するには情報がたりません。ただ、5社,6社と無理してまで相見積もりを取ると、情報が多すぎて比較しずらくなるので注意してください。
信頼できる業者探しをするなら、”営業担当との相性”も大切です。
というのも、ビジネスフォンを導入するまでだけで、お問い合わせから見積もり、打ち合わせに施工と何カ月もかかります。小規模でも2,3カ月、大規模になると1年近くかかることも。当然、営業担当とは何度も顔を合わせる訳です。
もし、営業担当との相性が悪ければ、打ち合わせのたびにストレスがたまります。中には、思うように要望を伝えられない方もいるでしょう。顧客の心をつかめない、顧客に気を使わせるような営業担当とは付き合わないのが安心です。
信頼できる業者探しでは、”5年以上の営業実績”があるのかも。
日本では”9割の企業が5年以内に倒産する”と言われています。ビジネスは競争社会、実力主義ですから仕方ないことです。しかし、反対に考えれば”5年以上の営業実績がある=業界から必要とされている”とも取れるのです。
ビジネスフォンは導入して終わりではなく、管理のためにも業者とは長く付き合っていくもの。であれば、少しでも実績のある、信頼のできる業者と契約したいものです。あくまで1つの目安ですが、5年以上の実績はチェックしてみましょう。
今回は、ビジネスフォンの種類ごとの仕組みと特徴、向いているオフィス環境についてまとめてみました。ビジネスフォンと一括りにしていますが、”レガシータイプ・IP-PBX・クラウドタイプ”の3種類が。以下が、各タイプの仕組みです。
もっとも普及し、種類の豊富なのが”レガシータイプ”。インターネット回線で利用できるのが”IP-PBX”。スマホ主体でも利用でき、導入の簡単なのが”クラウドタイプ”。どのビジネスフォンにも特徴があり、向いているオフィス環境があります。
ただ、現時点でいきなり大規模にクラウドタイプを導入するのはおすすめできません。クラウドタイプのほとんどが海外製で、万が一のトラブル対応に不安があるため。基本的には”レガシータイプ”か”IP-PBX”から検討するのがおすすめです。
ぜひ、ビジネスフォンの種類ごとの仕組みと特徴を理解した上で、ぴったりなサービスを検討してみてください。